【特撮】『仮面ライダービルド』 最終話「ビルドが創る明日」 ~ヒーローアイデンティティの物語~

2018/8/26放送『仮面ライダービルド』 最終話「ビルドが創る明日」 感想

 


※当然ネタバレしかありません
※劇場版 『Be The One』の内容を含みます
→感想はこちら 【特撮】『劇場版 仮面ライダービルド Be The Onehttp://colorablenote.hateblo.jp/entry/2018/08/05/002339

 

 

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『ラビット!』『ドラゴン!』
『Are you Ready ?』
「ビルドアップ!」
『ベストマッチ!!』

「「勝利の法則は決まった!!」」

 

 

 

仮面ライダービルド』はヒーローアイデンティティの物語である。

 


ヒーローものの目指す先はほとんどの場合「争いのない平和な世界」であり、それはつまり「ヒーローが必要とされない世界」である。
ヒーローが生まれる、求められるのは、困っている人や苦しんでいる人がいることが前提であり、つまり誰かの不幸と表裏一体の存在。故にヒーロー番組は「4号はいない方がいい」「いつかDASHを解散できる日が来るといい」と言ってきた。つまりヒーローは、頑張れば頑張るほど自分の存在意義を失っていく、自己否定を抱える存在である。
そこがつらくもかっこいいのだと思っていた。

 

平成仮面ライダーシリーズには、“変身”する、姿を変える、力を得ることによって、自分が何者であるかを知る、というキャラクターが度々登場する。キバの渡やディケイドの士、オーズの映司や鎧武の紘汰あたりがわかりやすい例だろう(武部Pのシュミなんだろうか)
ビルドの桐生戦兎はこの傾向が特に顕著である。戦兎は仮面ライダーであることでしか自分の存在を証明できない。
劇中何度も「仮面ライダーごっこ」「偽りのヒーロー」「空っぽの人間」と評されながらも、愛と正義を胸に立ち上がり誰かの明日を創るために戦う自意識過剰な正義のヒーロー、仮面ライダービルドであることが、桐生戦兎の存在を証明する唯一の手段であった。

 

故に、戦いが終わって平和になったら、桐生戦兎は何処へ行ってしまうのだろう、とずっと考えていた。
ヒーローであることで自分を保っていた人間は、ヒーローが必要とされない世界ではどうやって自分でいればいい?

 

劇場版『Be The One』で、戦兎はそのヒーロー性だけでなく、桐生戦兎として出会った人々との関係そのものが自分を創っているのだとようやっと意識を確立できる。
伊能に「兵器である仮面ライダーの排除を望むのは民衆の本心」「人々に戦争を思い起こさせる」「この国にとって必要ない」と言われても、「俺たちは誰かに認められるために戦っているわけではない」と返せたのは、正義のヒーローたる桐生戦兎としての意識を、それを創った人々を通して持てたからだ。

 

では、桐生戦兎を創った人々がいなくなったら?

 

エボルトの存在が消えた新世界では、仮面ライダーは生まれない、戦争は起こらない。
そこでは戦兎と一緒に戦ってきた仲間たちが、楽しそうに生きて、幸せそうに暮らしている。そして誰も、戦兎のことを知らない。

愛と平和のために戦ってきたヒーローは、愛と平和に満ちた世界には存在しえない。
桐生戦兎は、創造主というひとりぼっちになってしまった。

残酷な帰結。
しかし戦兎は、これは自分の願いであり、報いだとわかっているので、つらいともさびしいとも言わない。言う相手もいないのだから。

これが結末なんだ、と思おうとしたところで

 

「戦兎!!」

 

ヒーローがやってくる。

 

 

 

仮面ライダービルド』は繰り返し「万丈龍我にとってのヒーローは桐生戦兎であり桐生戦兎にとってのヒーローは万丈龍我である」と描いてきた。そして物語は、「ヒーローがいない世界」に到達する。
二人がヒーローであったことを誰も知らない、けれどお互いと視聴者は二人がヒーローであったことを覚えている。

戦兎が平成ライダーにおける「仮面ライダーに“変身”することで自分を自分にしている」キャラクターの極致なら、新世界はヒーローものが目指す「ヒーローが必要とされない世界」の極致であり、ビルド最終回はまさにその合わせ技である。
ヒーローであることで自分の存在を証明してきた人間が、ヒーローが存在しえない世界でどうやって自分として生きていくのか?に対する解が、「ヒーローをヒーローだと信じているヒーローがいる」ということ。
もちろん、「ヒーローでなくても自分は自分」という解を出す作品もあるだろう。しかしビルドの物語は、苦しみを伴うとしてもヒーローにヒーローでいることを止めさせない。そして、苦しむ戦兎に対してもおまえはヒーローだと言うのが、一緒にズタボロになって戦ってきた万丈である。

 

「誰がなんと言おうと、おまえは俺たちのヒーローだ」と言った万丈龍我は、いつだって桐生戦兎の隣りに立つヒーローなのだ。

 

 

 

仮面ライダービルド』は、 「一人で背負って戦うヒーローはかっこいいけどヒーローにもヒーローを支えるヒーローがいてほしい」「見返りを求めないヒーローはかっこいいけどヒーローもどこかで報われてほしい」というヒーローもの好きが抱えがちな願望を叶えてくれる作品であった。
ヒーロー番組としては「見返りを求めない孤高のヒーローかっこいい」であるし実際そうも思うが、一年観ていると、やっぱりヒーローだって助けられてほしいし、幸せになってほしいと思ってしまう。
そんな我が儘に一つの作品として答えをくれたことに、本当に感動している。

 

 

~~~真面目ぶりターン終了のお知らせ~~~

 

 

仮面ライダービルド』のみんなの好きなとこ全部詰めたよ!!!という最終回だった…一年間ありがとう…

映画公開前に「TV本編も配信動画もずっと戦兎と万丈なのに映画も戦兎と万丈なのこわい饅頭的な意味で」と呟いたけど、本当に初回から最終回まで映画も配信も完璧にブレずに戦兎と万丈だった…ブレない…

戦兎と万丈って互いのヒーロー性を補填し合う関係なので、ヒーローが必要とされない平和な国になったらお互いの重要性って下がっちゃうのかなとも思ってたんですよ。
それが…そんな…ヒーローが「存在しないことになった」世界だからお互いをヒーローだと知っているお互いに意味があるという…

録画観返すとけっこうさくさく進むけど、リアタイ視聴だと「今度は俺しか記憶がないのか」の後すごく長く感じた…きっと戦兎も長かったんだろうな…

あそこでふっと笑うの、脚本でも演出でもアドリブでも凄すぎる。情報密度が5倍は違う。

戦兎は先に新世界の万丈に会ったので自分は一人だと思っていたけど、万丈はどこかに戦兎もいるはずだと捜してたんですよね。「戦兎が自分を信じられなくなったときでも万丈は戦兎を信じている」を本当に最後まで貫いているの凄い。

何がおそろしいって、視聴者に「戦兎だけだと危うくてちょっと不安」っていう感覚があるのが前提のシーン運びになってることよ… 「さびしいけどなんとかなるでしょ」と思われてるような人間だったらあのカタルシスは成立しないのわかってるんだよ…

「そういうとこだぞ」っていう言い回しが好きじゃなくて自分でそのままでは使ったことないんですが、万丈(茶髪)がひょこっと出てきた途端顔がくしゃっとなるのは「戦兎おまえそういうとこだぞホントそういうとこだぞ戦兎」って思いました。

予告で戦兎が「最っ高だ!!」って言ってたから希望のある終わり方だとは思ってたけど、観てる最中は思い返す余裕ないし、くしゃっと笑ってる理由が「万丈と再会できたから」なんて予想できます????????できない。

よく考えなくても割と酷いというか切ない終わり方なんだけど、戦兎と万丈が並んだ絵面の圧倒的安心感が強すぎるわホント。

戦兎がひとり人ごみに消えていくなら一期っぽい、「世界まで創っちゃった天っ才物理学者桐生戦兎はさて次は何を創ろうか!!」と笑って終わるなら二期っぽい。戦兎と万丈がギャンギャンやりながらバイクで走ってっちゃうからベストオブベストのビルド最終回。

あのノリで振り返ると1話サブタイがただのノロケになるの頭痛。

葛城巧は紛れもなくビルドであり、仮面ライダーでありヒーローであったと思うけど、彼もまた「ヒーローを目指さなくてもいい」純粋な科学者になったんだろうな…

葛城巧も佐藤太郎も万丈龍我(黒髪)もそれぞれ自分の人生を送っているという事実が桐生戦兎と万丈龍我(茶髪)だけが世界から外れてしまっていることをはっきり示していて(絶対わざとだ)つらいんだけど、あの二人だったからここへ辿り着いたし、あの二人だからこれからがあるんだよ…

赤楚くんは犬飼くんとなるべくパッと見がかぶらないように髪を染めたそうなので、戦兎が存在しえない世界の万丈が黒髪なの、妙に理屈が通ってるんだよな…

極論、戦兎が「万丈にいてほしいと望んだから」だよなあ。どこかで消えるタイミングもあったのを、引っ掴んで新世界まで「連れて来ちゃった」んじゃないか…
万丈と再会した戦兎が一瞬泣きそうな顔をするのは、「巻き込んでしまった」意識がどこかにあって、それでもその苦しさごと相棒と一緒にやっていける喜びで「最っ高だ!!」と笑ったんじゃないかな…
犬飼くんの演技でそうとも見えるというだけなんですが。

スタッフロールを冒頭と最後で2回に分けてるのが細やか。

ビルドはニチアサとしてはメタな遊びが多いのが特色で、これがダメな人はダメだけどそれはもう仕方ないよな~と視聴者も開き直ってたのに、最後の最後で「俺たちがつくりました!!!!」って言ってくるの最高にずるい。

テレ朝夏祭りで2話のあらすじ紹介を完全再現してくれたというレポを見かけたが、あれはつい最近もう一度やったからだったのかw 最近のニチアサ俳優はみんな優秀なので、そうやってしれっとオタクを殺す伏線を張る…

 


~~~以下ラスト以外のところ~~~

 


「大丈夫だよね 私たちが創ったビルドなら」この台詞を美空に言わせる戦兎おまえはひどいやつだよ!!!


スパークリング出てきたところで声をあげたあたりが私は私だった。泡エフェクト好き~。犬飼くんもお気に入りだそうだからそりゃ出ますよ(アニメージュ9月号参照)

実際このあたりで あっこれは良い最終回だ!!! って直感したんだった…
ラビラビ→タンクタンク→スパークリングと中間フォームを遡って相手の装備をゴリゴリ削っていって、初期フォームで最終武器ぶっかまして、「最高のコンビ」のベストマッチでフィニッシュする流れはどストレートに熱い。

しかし「ついに初期フォームか」とか言っちゃうエボルトさんライダーオタクの素養がある。

金兎銀龍フォームことラビットドラゴンフォームに対して『ベストマッチ!!』って言っちゃうビルドドライバーさん空気が読める、と思ったけど、そもそもビルドドライバーにベストマッチ検索機能を付けたのは戦兎自身であることを我々は思い出さなければならない(3話)

タンクフルボトルとロックフルボトルにだけは抗議する権利がある。


よく見ると嵐の中をクローズウォッチが舞っている。どこから来た。
なんでクローズウォッチなんだってジオウくんビルドウォッチはもう持ってるか。

 

変身能力やアイテムを失うENDは多いんだけど、ビルドの場合戦兎は自分(と万丈)が使うものはほとんど自分でつくってきたし概ね覚えてるだろうから、再現することも可能なのでは… ドライバーはさておきフルボトルは?と思ったけどロストフルボトルがあったくらいだしな… あっマシンビルダー使ってる。

 

『Vシネクスト ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』 http://cross-z.jp/
本編普通に1/3くらい仮面ライダークローズじゃなかった??????
クローズ主人公のVシネって戦兎からすれば自分がスカウトしてずっと育ててきたアイドルが武道館デビューするみたいなものでしょ。
クローズドラゴンがグレートクローズドラゴンに変化したので設定上もうノーマルクローズには変身できないらしいんだが(宇宙船vol.161特写参照)、どうにかして出すのかな。
マッスルギャラクシーフルボトルて筋肉バカと地球外生命体でベストマッチ的なあれかと思ったら、マジで「クローズエボル」とかいうロクでもない音声が入っている件。 https://hobby.dengeki.com/news/621212/
『Be The One』や最終回を「美しい」と評したオタク数値の高い犬飼くんが「Vシネは毎回ヒロインが出てくるんだけどそこはお楽しみ」と言っていたあたり、普通のきれいなおねえちゃんじゃないんだろうなあと思いました。武田くんが「剣星さんがかわいいかわいいってずっとニヤニヤしてた」と言ってたところからすると子役の可能性アリアリ。

 

私含め、視聴者も序盤は「龍我」呼びしてるのがいつのまにか「万丈」呼びになってるの、物語に染まっていく感じがして楽しかったです。

 

ビルドはなるべく役者方面は漁らないようにしてたんですよね。オンオフ合わせてモノが多すぎる!ってのもあるけど、インタビューとかから役者の性質みたいなものが見えるとそれを演技からプラマイしちゃうようになるし、そうやって観るのはしんどいなって。まあ新高輪は行ったんですが。
今になってテレ朝公式キャストブログを読んで「バッドハッピーエンドな感じ」という表現に倒れかけたし、やっぱり犬飼くんは語彙のあるオタクだなあと思いました。 https://www.tv-asahi.co.jp/reading/build/4495/

 

何が嬉しいって、これで心おきなくジオウ初回を迎えられることですね…えっ初回から出るの…
しかもその後がルパパト赤二人旅回って情緒の凹殴りが過ぎるでしょ。東映大丈夫???人の心ある???? (グリス消滅→エアロビの週を思い出しつつ)

 


~~~最後に~~~

 


最終回前にこんなに情緒不安定になったのはオーズ以来でした。
ちなみに戦隊も入れるとトッキュウやゴーバスの時には泣いてたし、なんならシンケンや電王の時も凹んでました。靖子酷い。
個人的に、「終わるのがさびしい」よりも「終わりを受け入れてラクになりたい」が勝るのがハマっている証拠だと思っていて、ビルドはまさに久々に心臓を掴まれた作品でした。
もちろんツッコミどころは多々多々多々あるけど(not誤記)、それも含めて本当に楽しかった。
平ジェネFINAL公開時「武藤脚本好みな気がする」「ビルド好きだな私」と思った気持ちのまま最終回まで来られて本当に良かった!!!
ひたすらに感謝です。

 

またVシネクストもある!!(こんな名称だったっけ)
超バトルDVDもある!!(ローグにローグをぶち負かしたフルフルボトルのリペイントアイテムを渡す戦兎とは)
ひょっとしたら小説もある!!(かなあ?)
その前にファイナルステージがある!!(スペシャルバージョン配信して)(あと木山くん呼んで)
どうなる去年でハードルが上がりまくった平ジェネFOREVER!!(がんばれ)

 


仮面ライダービルド』、See you !!